「栄養カウンセラーはどんな仕事をする職業なんだろう?」
「なるのには特別な資格が必要なのかな?」
栄養カウンセラーに興味はあるものの、どんな職業なのかあいまいな人は多いですよね。
栄養カウンセラーの全体像が明確になれば、目指すべきかも見極めやすくなります。
そこでこの記事では平均年収や将来も交え、栄養カウンセラーの仕事内容を解説します。なるうえで求められるものや資格の必要性なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
- 栄養カウンセラーは栄養の知識を活かし食生活をサポートする仕事
- 仕事内容には栄養カウンセリング、セミナーなどの開催がある
- 栄養カウンセラーは今後も需要が高まり、将来性のある職業
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栄養カウンセラーとは?
栄養カウンセラーとは食事や栄養に関する専門知識を活かし、人々の健康的な食生活をサポートする専門家です。
特徴は、一方的に指導するのではなくカウンセリングの技術を用いて対話する点です。相談者一人ひとりの悩みや目標、ライフスタイルに深く寄り添います。
食生活の課題や心理的な壁を一緒に見つけ出し、相談者が自ら納得して行動を変えていけるようサポートします。「食のパーソナルトレーナー」ともいえる存在で、健康志向の高まりとともに注目されている職業です。
管理栄養士との違い
栄養カウンセラーと管理栄養士では仕事内容や年収・必要な資格などの点で違いがあります。
栄養カウンセラー | 管理栄養士 | |
---|---|---|
仕事内容 | カウンセリングによる行動変容支援が中心。セミナー開催や商品開発も。 | 傷病者への栄養指導や給食管理、栄養管理など専門業務が中心。 |
平均年収 | 約300万円 | 約326万円 |
必要な資格 | 必須資格なし(民間資格が主) | 国家資格「管理栄養士」が必須 |
栄養カウンセラーは、カウンセリングを通じて相談者の悩みに寄り添い、自ら行動を変えていけるよう支援する「伴走者」としての役割が中心です。一方、管理栄養士は栄養学の専門家として、病院での食事療法や学校での給食管理など専門的な業務を担います。
また、平均年収にも差が見られます。正社員の場合、栄養カウンセラーの平均年収が約300万円からであるのに対し、管理栄養士の平均年収は約326万円です。管理栄養士の方が給与水準は高い傾向にありますが、栄養カウンセラーは実績次第で年収を大きく伸ばせる可能性があります。
管理栄養士として働くには、「管理栄養士」の資格を取得することが法律で定められています。栄養カウンセラーには必須の国家資格はなく、誰でも活動を始めることが可能です。
職場に応じて役割が異なる
職場に応じて栄養カウンセラーの役割は異なります。
役割 | 活動例 | |
---|---|---|
医療・福祉 | 食事相談、生活習慣の改善サポート | クリニックや介護施設でのカウンセリング |
教育 | 食育の推進、栄養教育 | 学校や保育園での講演、自治体と連携した子ども・保護者向けセミナーの開催 |
民間企業 | 商品開発・監修、顧客への栄養サポート | フィットネスジムでの食事指導、健康食品会社での商品企画、飲食店のメニュー監修 |
医療や福祉の分野では、クリニックや介護施設で食事相談に応じることがあります。ただし、病院などで傷病者への栄養指導を行う場合は、管理栄養士の資格が求められるケースがほとんどです。
教育機関も活躍の場の1つで、学校や保育園で食育に関する講演を行ったり、自治体と連携して地域の子どもたちの栄養教育を担ったりします。
また、栄養カウンセラーは民間企業での需要も高まっています。フィットネスジムで利用者の目標達成を食事面から支えたり、健康食品を扱う会社で商品開発に関わったりと、専門知識を活かす場面はさまざまです。
栄養カウンセラーの仕事内容
ここからは栄養カウンセラーの主な仕事内容を、3つにまとめて紹介します。
栄養カウンセリング
栄養カウンセリングは、栄養カウンセラーの中心となる仕事です。相談者の目的は、ダイエットや体質改善、生活習慣病の予防などさまざまです。
具体的なカウンセリングでは、まず相談者の食事内容や生活習慣、悩みなどを丁寧にヒアリングします。ヒアリングした情報をもとに、栄養バランスを評価し、目標達成に向けた食事プランを作成していくのです。
たとえば、フィットネスジムに所属する栄養カウンセラーであれば、トレーニング効果を最大化するための食事法を提案します。クリニックであれば、医師と連携しながら持病のある方の食事改善をサポートする役割を担うのです。
働く場所や対象者に応じて、専門性を発揮しながらカウンセリングします。栄養カウンセリングの特徴をより詳しく知りたい方は、下の記事を参考にしてください。

セミナー・ワークショップの開催
セミナーやワークショップの開催も、栄養カウンセラーの仕事の1つです。
企業から依頼を受けて従業員の健康意識を高めるための講座を担当したり、自治体の事業の一環として地域住民に向けた生活習慣病予防のセミナーをしたりします。
たとえば、企業の健康経営を支援する際は、昼食の選び方や間食の工夫など従業員がすぐに実践できるテーマで話します。
学校や保育園では、子どもや保護者を対象とした食育に関する指導もするのです。紙芝居やクイズを取り入れ、楽しみながら学べる工夫が必要です。
セミナーやワークショップは、栄養に関する正しい知識を多くの方に届け、社会全体の健康意識の向上に貢献できるやりがいの大きな仕事となります。
商品の開発・監修
食品の商品開発や監修も、栄養カウンセラーの仕事内容です。
食品メーカーやサプリメントを扱う会社では、新商品の栄養設計に携わったり、コンセプト立案に関わったりするのが代表例です。栄養学的な知見はもちろん、市場のトレンドや消費者のニーズを汲みとる力も必要です。
また、飲食店のメニュー監修では健康志向のレストランでカロリー計算されたメニューや、特定の栄養素を豊富に含む料理の考案をサポートします。最近では、コンビニのお弁当や宅配食サービスのメニュー監修なども栄養カウンセラーの力が求められるようになりました。
専門知識が「食」という具体的な形になり、多くの方の手に届くのは、栄養カウンセラーならではの大きな魅力です。
栄養カウンセラーの平均年収
求人ボックスやindeedによれば、正社員として勤務する場合、栄養カウンセラーの平均年収は約300万円です(2025年6月時点)。
国家資格である管理栄養士の平均年収と比較すると、管理栄養士の資格がなければ行えない業務があるため、やや低い水準になる傾向があります。
しかし、栄養カウンセラーの年収は、個人のスキルや実績次第で大きく向上させられるのです。
スポーツ栄養や臨床栄養などで高い専門性を築いたり、カウンセリングの実績を積み重ねたりすると、より良い条件の職場に転職できます。また、独立して人気の栄養カウンセラーになれば、年収1,000万円以上も実現可能です。
栄養カウンセラーの需要・将来性
栄養カウンセラーは今後も需要が高まり、将来性のある職業といえます。その背景には、社会全体の健康意識の変化が関係しているのです。
理由の1つに、生活習慣病の増加が挙げられます。厚生労働省の報告によると、糖尿病や高血圧症など食生活に起因する病気は、国民の健康における課題です。
病気になる前の段階で食生活を見直し健康を維持しようとする方が増えると、食生活の改善をサポートする栄養カウンセラーの役割はますます大きくなります。
また、活躍の場が多様化している点も、将来性を後押ししています。従来は医療機関や福祉施設がおもな職場でしたが、近年では企業の健康経営支援、パーソナルジムでの栄養サポートなど、さまざまな分野に活躍の場が広がっているのです。
栄養カウンセラーの働きがい
ここからは次のトピック別に、栄養カウンセラーの働きがいを解説します。
やりがい
下記の2つが栄養カウンセラーとして働く主なやりがいです。
- 相談者の変化を見届けられる
- 一人ひとりの人生に深く寄り添える
カウンセリングを続けるなかで「目標体重を達成できた」「健康診断の数値が改善した」などの目に見える成果が出たときは嬉しくなります。
また、一人ひとりの人生に深く寄り添えるのも、栄養カウンセラーのやりがいの1つです。
栄養学の知識を伝えるだけでなく、相談者の生活背景や食の好みまで理解した上で、一緒に改善策を考えていきます。このような「人生に寄り添う支援」ができる点に、深い意義を感じる方もいます。
食を通して相談者の人生をサポートできるのは、大きなやりがいにつながるのです。
きつさ・つらさ
やりがいがある一方で、栄養カウンセラーの仕事には次のようなきつさやつらさもあります。
- 相手が変わってくれないこともある
- 正解が1つではない難しさがある
つらさの1つは、アドバイス通りに相談者が行動してくれない場合があることです。どれだけ親身に的確な提案をしても、最終的に実行するのは相談者自身です。行動に移してもらえなければ成果は出ず、無力感を覚えることがあります。
また、体質やライフスタイルは千差万別なため、「これが絶対の正解」という解決策がありません。経験が浅いうちは、どのような提案が相談者にとって最適か悩むことがあります。
栄養カウンセラーに求められるもの
ここからは次のトピック別に、栄養カウンセラーに求められるものを解説します。
求められる知見・スキル
栄養カウンセラーには、下記の知見やスキルが求められます。
内容 | |
---|---|
栄養に関する知識 | ・栄養素の働き、エネルギー代謝など身体の仕組み ・ライフステージや生活習慣病に関する専門知識 ・相談者に合わせた食事プランを設計する力 |
カウンセリングやコミュニケーション能力 | ・相談者の悩みや背景を丁寧に聞き出す傾聴力 ・相手に寄り添う共感力と柔軟な提案力 |
心理学的なアプローチ法 | 心理学的なアプローチで「変われない」原因を探る力 |
三大栄養素やビタミン・ミネラルの働きといった基礎から、エネルギー代謝の計算・ライフステージごとの栄養ニーズまで、栄養カウンセラーには幅広い知見が求められます。生活習慣病と食事の関連性など、管理栄養士レベルの専門知識が必要とされる場面もあるでしょう。
次に、高いカウンセリング能力とコミュニケーション能力も重要です。相手の悩みや生活背景を聞き出す傾聴力、相手の状況に合わせた柔軟な提案力が求められます。
また、認知行動療法のような心理学的なアプローチを用いて、「変わりたいけれど変われない」という方を支援するスキルも期待されます。
資格の必要性
結論、栄養カウンセラーになるのに必須の資格はありません。
弁護士や医師のように、特定の資格がなければ業務を行えないわけではないからです。そのため、無資格からでも栄養カウンセラーとして活動することは可能です。
ただし、相談者の健康を預かる仕事である以上、知識や技術を客観的に証明できる資格がある方が、信頼性が高まります。
資格取得の過程で知識を学ぶことは、自信を持ってカウンセリングに臨むための土台にもなります。「資格がなくても良い」と考えるのではなく、責任をもってサポートするために、資格取得を視野に入れるのが賢明です。
栄養カウンセラーの資格を詳しく知りたい方は下の記事を参考にしてください。

栄養カウンセラーになるには?
自身の学歴やキャリアプランに応じて、下記の3つのルートが考えられます。
- 管理栄養士・栄養士養成課程がある大学に進学する
- 独学で資格を取得する
- 栄養カウンセラーの養成スクール経由で就業する
一般的なのは、管理栄養士や栄養士の養成課程がある大学や専門学校へ進学し、国家資格を取得してからカウンセリングのスキルを磨く方法です。
すでに社会人として働いているときや大学に通うのが難しいときは、独学で民間の講座を活用し、資格取得を目指す道もあります。栄養カウンセラー関連の民間資格は数多く存在し、オンラインで学べるものも利用できるのです。
なかには、資格取得後の就業サポートまで行う栄養カウンセラーの養成スクールもあります。実践的なスキルを効率よく身につけ、同じ志を持つ仲間とつながりながらキャリアをスタートできます。
まずは情報収集を行い、自分に合う学び方を見つけることから始めましょう。栄養カウンセラーのなり方を詳しく知りたい方は下の記事を参考にしてください。

まとめ
栄養カウンセラーは、専門的な知識とカウンセリング技術を用いて、人々の食生活を改善に導くやりがいのある仕事です。
健康志向の高まりや予防医療の重要性が増すなかで、その需要は今後も高まります。
栄養カウンセラーを目指すルートは複数あります。自身の状況に合う方法を選び、食を通して人々を支えるための第一歩を踏み出してみてください。