「心理カウンセラーとして独立したいけど、何から始めればいいんだろう?」
「フリーランスで活動していくのって難しいのかな…」
専門性を活かし、フリーランス心理カウンセラーへの独立を考えている方は多いですよね。計画的に準備をすれば、心理カウンセラーが独立し活躍することは可能です。
ただ、独立までの具体的な道のりや安定して活動を続けるための方法がわからず、不安を感じている方もいるはず。
具体的な計画がないまま独立に踏み切ると、集客や収入面で苦労し「もっとしっかり準備しておけばよかった…」と後悔しかねません。
そこで本記事ではステップ形式で、心理カウンセラーがフリーランスに独立する手順を紹介します。この記事を読めば、心理カウンセラー独立への道筋が明確になり、着実に準備を進められますよ。
- 心理カウンセラーが独立するためには企業や副業での実務経験がいる
- 提供サービスの設計や集客動線の整備などの知識も必要になる
- 独立する注意点は契約・トラブル対応に備え、専門性を磨き続ける
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心理カウンセラーがフリーランスに独立する3つの方法
はじめに心理カウンセラーがフリーランスに独立する主な方法を、3つにまとめて紹介します。
企業で実務経験を積んだ後に独立

内容 | |
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方法 | 病院や学校などの相談室で常勤または非常勤の心理カウンセラーとして勤務し、実践的なスキルと実績を積んだ後に独立する。 |
メリット | ・安定した収入を得ながら経験を積める ・さまざまな相談ケースに対応する力がつく ・組織内での人脈が独立後の資産になる |
デメリット | ・独立までに時間がかかる ・組織の方針に沿う必要があり、自由度は低い ・独立に必要な経営や集客のスキルは別途学ぶ必要がある |
おすすめ度 | ★★★★★ |
難易度 | ★★★☆☆ |
1つ目は、企業で心理カウンセラーとしての実務経験を積んでから独立する方法です。
企業で働いた後に独立するメリットは、経済的な安定を確保しながら心理カウンセラーとしての実力を養える点です。
組織に所属していると、さまざまな相談に対応する機会に恵まれます。たとえば、医療機関では医師や看護師と連携した臨床経験、学校では保護者や教員と関わる経験は、独立後の大きな強みとなるでしょう。
また、給与を得ながら経験を積めるため、焦らずにスキルアップに専念できます。ただし、独立するまでには数年単位の期間が必要になるケースが多く、すぐに自分でカウンセリングを始めたい方にとっては、遠回りに感じるかもしれません。
副業で実務の経験を積んだ後に独立

内容 | |
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方法 | 本業の収入を確保しつつ、週末や夜の時間を利用してオンラインカウンセリングで副業として活動する。徐々に顧客を増やし、独立の基盤をつくる。 |
メリット | ・収入面の不安が少なく、低リスクで挑戦できる ・自分のペースで独立準備を進められる ・フリーランスとしての集客や運営を試せる |
デメリット | ・本業との両立が大変で、時間管理が難しい ・まとまった活動時間を確保しにくい ・すぐに大きな収入にはつながりにくい |
おすすめ度 | ★★★★☆ |
難易度 | ★★★☆☆ |
2つ目は、副業としてカウンセリングの実績をつくり、段階的に独立を目指す方法です。
副業から始めて独立する魅力は、リスクの低さです。本業で安定した収入基盤があるため、精神的な余裕を持って心理カウンセラー独立の準備を進められます。
たとえば、平日は会社員として働き、週末にオンラインカウンセリングをするスタイルであれば無理なく実績を積み上げていけるのです。
一方で、本業と副業の両立は想像以上に体力を消耗します。限られた時間の中でカウンセリングの質を維持しながら独立準備も進めるには、自己管理が不可欠です。
まずは週末に数件の相談を受けるところから始め、少しずつ活動を広げていきましょう。
スクール経由で独立

内容 | |
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方法 | カウンセリングの知識やスキルを体系的に学べるスクールに通い、資格取得や開業のノウハウを習得する。スクールの独立支援制度があれば、活用して開業する。 |
メリット | ・未経験からでも体系的に知識とスキルを学べる ・同じ目標を持つ仲間や相談できる講師がいる ・独立・開業サポートが受けられるケースがある |
デメリット | ・受講費用がかかる ・スクールの質によって学べる内容に差がある |
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
難易度 | ★★★★☆ |
3つ目は、心理カウンセラー養成スクールで学びながら独立を目指す方法です。
カウンセリングの経験が浅い方や、基礎から学び直したい方に有効なのがスクールです。独学では時間がかかる学習も、スクールではカリキュラムに沿って効率的に進められます。
また、独立支援制度を設けているスクールもあるため、集客方法や開業手続きに関するアドバイスを受けられるのは心強い点です。
ただし、スクールを卒業したからといって、すぐに心理カウンセラーとして活躍できるわけではありません。知識を実践で使えるスキルに変えていくためには、卒業後にモニターカウンセリングを重ねるなどの努力は必要になります。
なお、おすすめの心理カウンセラー養成スクールを詳しく知りたい人は次の記事を参考にしてください。

心理カウンセラーのフリーランス独立手順
ここからは心理カウンセラーのフリーランス独立手順を、9つのステップにまとめて解説します。
- STEP1:実務経験を積む
- STEP2:資格を取得する
- STEP3:提供サービスを設計する
- STEP4:集客動線を整備する
- STEP5:契約書・規約類を用意する
- STEP6:開業届を提出する
- STEP7:青色申告承認申請を提出する
- STEP8:職業賠償責任保険に加入する
- STEP9:開業環境を整える
心理カウンセラーとして独立開業するまでの道のりは、決して1つだけではありません。本記事で紹介するのは、カウンセリングの相談室編集部が推奨する独立手順です。
参考にしながら自身の状況に合わせて計画を調整し、着実に準備を進めていきましょう。
STEP1:実務経験を積む

まずは、心理カウンセラーとして実務経験を積みましょう。
相談者からの信頼は、心理カウンセラーの経験と実績から生まれます。知識だけでは、人間の心という複雑な問題に対応するのは困難です。実務経験を積むことでさまざまな悩みや背景を持つ人々と向き合い、セオリー通りにはいかないカウンセリングを肌で学べます。
たとえば、クリニックでうつ病の患者のケアに携わった経験や、スクール心理カウンセラーとして不登校の生徒と関わった経験は、独立後に特定の分野を専門とする際の強みになります。
数年間経験を積み、実践的なスキルと自信を身につけることが、独立後の安定した活動の基盤を築くのです。
STEP2:資格を取得する

実務経験を積みながら、次のような資格を取得しましょう。
資格名 | 種別 | 特徴 |
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公認心理師 | 国家資格 | 心理職初の国家資格。 医療・福祉・教育など幅広い分野で活躍でき、社会的信用が高い。 |
臨床心理士 | 民間資格 | 歴史と実績があり、公認心理師と並んで高い専門性と知名度を持つ。 大学院の修了が主な受験資格。 |
メンタル心理カウンセラー | 民間資格 | 心理学の基礎からカウンセリング技法までを学ぶ。 通信講座などで取得を目指しやすく、初心者にも人気。 |
メンタルケア心理士 | 民間資格 | 心理学に加え、基礎的な医学知識も問われるのが特徴。 医療や福祉分野への関心が高い人向け。 |
心理カウンセラーの独立において、資格は必須ではありません。しかし、資格を保有している事実は専門的な知識と技術を持っている証明となり、信頼を得るために重要です。
資格取得を目指して勉強する過程で、カウンセリングに関する知識を整理できるのも利点です。自身のスキルを客観的に証明するためにも、関連資格の取得を検討しましょう。
自身のキャリアプランに合ったものを選び、計画的に取得を目指しましょう。心理カウンセラーにおすすめの資格をより詳しく知りたい人は、下の記事を参考にしてください。

STEP3:提供サービスを設計する

実務経験と資格という土台ができたら、次は提供サービス内容を設計します。
サービスを具体的に設計することで、相談者に的確にアプローチできるようになります。サービス設計で考えるべき項目は下記の通りです。
具体例 | |
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対象者 | どんな悩みを抱え、どんな人を助けたいのかを明確にする。 (例:職場の人間関係に悩む20代の会社員) |
サービス内容と料金 | 初回相談や継続セッション、メール相談など複数のプランを用意する。 (例:初回60分 5,000円、継続60分 8,000円、月4回継続プラン 30,000円など) |
提供形態 | 対面やオンライン(Zoom・LINE・電話)、チャットなど対象者が利用しやすい方法を検討する。 |
サービス内容を設計する作業が、心理カウンセラー独立後の活動の骨子をつくります。
STEP4:集客動線を整備する

提供サービスを設計したら、集客動線を整備しましょう。
独立した心理カウンセラーの多くは、複数のツールを組み合わせて集客の仕組みを構築するのです。集客動線には、下記のツールが活用されます。
たとえば、Instagramで心の悩みに関する情報を発信して認知を広げ、プロフィール欄のリンクからブログへ誘導します。ブログで自身のカウンセリングへの思いを伝え、記事内に設置した予約システムへのリンクから申し込みにつなげる方法で動線をつくるのです。
まずは試しやすいツールから活用してみましょう。
STEP5:契約書・規約類を用意する

集客動線を整備したら、契約書や規約類を用意しましょう。
心理カウンセラーは、相談者の個人的な情報を取り扱います。契約書や規約類を整備しておかないと、料金の未払いや予約の無断キャンセルなどの金銭的なトラブル、カウンセリング内容に関するクレームなど、さまざまな問題に発展する可能性があります。
最低限、下記の書類は用意しておきましょう。
- 利用規約(例:経済産業省)
- 免責事項(例:内閣府)
- プライバシーポリシー(例:国土交通省)
- キャンセルポリシー(例:一般社団法人日本中小企業経営者協会)
次の画像は利用規約の例なので、参考にしてください。

Webサイトのテンプレートを参考にしたり、必要であれば行政書士などの専門家に相談して作成したりする方法があります。支払い方法についても、事前に決めて明記しておきましょう。
STEP6:開業届を提出する

独立して心理カウンセラーの仕事を始めるには、開業届を提出しましょう。開業届は事業を開始した日から1か月以内に提出するのが原則です。
開業届を提出しなくても罰則はありませんが、提出することで社会的な信用が得やすくなったり、後述する青色申告が可能になったりする利点があります。
手続きはe-Taxで開業届を作成し、提出するだけです。屋号や事業内容などを記入しますが、業種は「カウンセリング業」や「相談業」などの記載で問題ありません。

e-Taxからであれば、税務署に行かずに提出できるのでおすすめです。開業届の提出が、事業をスタートさせる第一歩となります。
STEP7:青色申告承認申請を提出する

開業届を提出する際には、青色申告承認申請書も一緒に提出しましょう。
青色申告とは確定申告の方法の1つで、白色申告に比べて複雑な帳簿づけが求められる代わりに、節税効果が期待できる制度です。

メリットは、最大で65万円の青色申告特別控除を受けられる点です。年間の所得から最大65万円を差し引いて税金を計算できる制度で、所得税や住民税、国民健康保険料の負担を軽減できます。
青色申告承認申請は、原則として開業日から2か月以内に提出する必要があります。最近ではfreeeやマネーフォワードなどの会計ソフトを使えば、簿記の知識が少なくても簡単に青色申告の書類を作成できるのです。
STEP8:職業賠償責任保険に加入する

損害賠償を請求された際に備えるのが「職業賠償責任保険」です。加入しておくと、損害賠償金や弁護士費用などが補償され、経済的な負担を軽減できます。
心理カウンセラーは、相談者との間で予期せぬトラブルが発生する可能性がゼロではありません。たとえば、カウンセリングによって精神的な苦痛が大きくなったと訴えられたり、個人情報を漏洩してしまったりするリスクが考えられます。保険に加入している事実が、業務に集中するための精神的な支えになるのです。
保険料は補償内容によって異なりますが、年間数万円程度から加入できます。心理カウンセラー向けの保険を取り扱う保険会社を比較し、加入しておきましょう。
STEP9:開業環境を整える

最後に、実際にカウンセリングを行うための開業環境を整えましょう。
相談者が安心して話せる環境をつくるのは、心理カウンセラーの重要な務めです。環境が整っていないと相談者がリラックスできず、カウンセリングの効果が十分に発揮されない可能性があります。具体的には、下記のような工夫をしましょう。
整える環境とポイント | |
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対面カウンセリング | 場所は自宅の一室、レンタルサロン、シェアオフィスなど。プライバシーが守られ、静かで落ち着いた空間を確保する。 |
オンラインカウンセリング | 安定したインターネット回線を確保する。映り込みへの配慮: 生活感が出ないよう、背景(壁、バーチャル背景など)を整える。 クリアな音声のため、マイク付きイヤホンや外部マイクを用意する。 |
あわせて、自身のプロフィールや連絡先を記載した名刺や、サービス内容をまとめた簡単な資料を作成しておくと、スムーズな情報提供につながります。
フリーランス心理カウンセラー・独立後のリアル
ここからは次のトピック別に、フリーランス心理カウンセラーのリアルを紹介します。
平均収入

フリーランス心理カウンセラーの収入は、完全に自分次第となります。収入は「単価 × 相談件数」で決まるため、自身のスキルや経験、集客力によって変動するのです。
たとえば、1回60分8,000円のカウンセリングを月に20件行えば、月収は16万円です。月に40件に増やせれば、月収は32万円になります。なかには、1日に5人を施術して月収83万を安定させているセラピストの方もいました。
努力次第で会社員時代の収入を超える可能性がある一方で、思うように集客ができなければ収入が不安定になるリスクも伴います。独立当初は収入が安定しない時期が続くため、生活費の半年分程度の貯蓄があると安心して活動に専念できるでしょう。
やりがい

フリーランス心理カウンセラーのやりがいは、相談者が自身の力で問題を乗り越え、元気になっていく姿を間近で見届けられる喜びです。
たとえば、あるカウンセラーは自身のコンプレックスを克服し「カウンセリングを受けてよかった」と話してくれた瞬間に、この仕事をしていてよかったと感じています。
相談者の人生の重要な局面に関わり、相談者の最後の一押しができたときの達成感は、何物にも代えがたいものです。また、フリーランスのやりがいとして、組織の制約なく自分の信念に基づいたカウンセリングを追求できる点も挙げられます。
つらいこと

フリーランスとして活動する上でのつらいことは、集客がうまくいかずに悩むことです。
あるカウンセラーは開業当初の収入がお小遣いにも満たず、日々「仕事をしている」という実感を得られない時間が続いたと語っています。予約が入らないと経済的な不安だけでなく、精神的なつらさを伴います。
また、すべての業務を一人でこなさなければならないため、孤独を感じやすいのも特徴です。相談者との関わりで生じた悩みを共有できる同僚がおらず、一人で抱え込んでしまうケースもあります。
つらさを乗り越えるためには、カウンセラー仲間との交流の場に参加したり、自身の心の健康を保つために指導者から指導を受けたりする工夫が求められます。
心理カウンセラーがフリーランスに独立する際の注意点

心理カウンセラーがフリーランスに独立する際は、下記3点に注意が必要です。
- 独立後からがスタートと考える
- 契約・トラブル対応に備える
- 専門性を磨き続ける
まず、フリーランス心理カウンセラーは独立してからが始まりという事実を認識しましょう。継続的に相談者を獲得し、生計を立てていくかが課題となります。
次に、契約や金銭のトラブルに備える意識も不可欠です。事前に利用規約やキャンセルポリシーを定めておくことで、トラブルを未然に防げます。
最後に、専門性を磨き続けることも重要です。研修会に参加したり最新の論文を読んだりして、知識とスキルをアップデートし続けましょう。その努力が、相談者からの信頼を維持し、長く活躍し続けるための鍵となります。
まとめ
カウンセラーとしての独立は、計画的な準備と継続的な努力が成功の鍵を握ります。企業や副業で実務経験を積む、スクールで体系的に学ぶなど、独立に至る道筋はさまざまです。
自身の状況に合った方法を選び、資格取得やサービス設計、集客動線の整備といった手順を進めていきましょう。
この記事で紹介した手順や注意点を参考に、独立という目標に向けたアクションを始めてみてください。